武式(ぶしき)太極拳は、中国に広く伝わる伝統的な武術、太極拳の流派の一つとして知られています。武式太極拳は太極拳の中でもメインストリームにとても近い位置に存在している流派で、正統派。もともと太極拳と言う武術自体を考え出した陳式太極拳、それをマスターした楊露禅によって考案された楊式太極拳、そして武式太極拳はその楊式太極拳から派生した流派という位置づけになります。世代で言えば、陳式が初代、楊式が2代、そして武式は3代目という事になるのでしょうか。

 

武式太極拳を考案した創始者は、武禹襄。彼は陳式太極拳を学んでいた時代の楊露禅(楊式太極拳の創始者)を師匠とし、陳式太極拳を最初にマスターする事になります。本当は、陳式太極拳のマスターでもある陳長興から直接教わりたかったのだそうですが、願いが叶う事はなく、陳長興の弟子でもあった楊露禅から陳式太極拳を教わったといわれています。

 

そのあと、楊露禅は楊式太極拳という新しい流派を生み出します。武禹襄もまた、楊露禅について楊式太極拳をマスター。つまり、かれは武式太極拳を考案する前に、太極拳の原点でもある陳式太極拳と楊式太極拳のどちらもマスターしていたのです。武式太極拳が太極拳の伝統的な流派の一つに数えられるのは、こうした歴史的な背景があるのでしょう。

 

武式太極拳の創始者でもあった武は、太極拳と言う武術を理論的に普及していくためにも大きな貢献をした人物の一人とも言われています。太極拳の元祖でもあった陳式や楊式の頃には、実はこの武術は「太極拳」という名前がついていたわけではないのだそうで、この武術に共通して「太極拳」というネーミングをしたのは、武式太極拳の創始者の兄と言われています。この兄もまた、武式太極拳から派生した流派を考案しましたが、親族にのみテクニックを伝授しなかったため、現在では伝承できる人はかなり少なく、幻の拳法とも呼ばれているのだそうです。兄の流派は幻の拳法、弟の流派は正統派、太極拳って奥が深いですね。

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